スペインのカラルエガ出身でパレンチア⼤学で勉強した後、1194年に司祭となり、オスマ市の教会の参事員に加えられて六年間副院長の任務を果した。
1200年に、フランスの南部を旅した。 そこでアルビ派の異端者の影響を受けて正しい信仰をすてた数多くの信者を見て悩んだドミニコは、道に迷っている羊たちを良き牧者イエズスのみもとに連れ戻すには、権威のある福音宣教(当時それは司教の権限であった)と、人々の間で福音に沿った生活をする以外に道はないと悟った。それ以来、説教と清貧が彼の使徒的生活の方針となった。幾人かの同志が加わった時でも、ドミニコはそれ以外のプログラムを示しはしなかった。
1219年に、ドミニコはローマに行って教皇ホノリオ三世の下にひれふして、創立しようとする新しい修道会のために聖アグスチノの戒律に基いた会憲を認可して下さるようにたのんだ。教皇はそれを喜んで許されると共に福音を公に伝える権利をも与えられ「説教者兄弟会」という名前を賜って、「闘士よ、行って真理のともし火で全世界を照らして下さい」と言って励ました。
ドミニコはツルーズ市に帰って、兄弟たちを世界に送り出すのを友人フルク司教に打ち明けた。「麦粒は積んで置けば、くさるばかりですが、これをまけば実るではありませんか」と言ってその通りになった、兄弟たちはそれぞれの国に行って修道院を建て、そこで修練者を採用したがドミニコの晩年にドミニコ会のメンバーの人数は非常にふえて、約五〇〇人となった。
ドミニコは真理にとりつかれた説教者であり、アシジの聖フランシスコと同じように、托鉢修道者であった。彼が創立した会の修道者が使徒職に携わっている間、同会の修道女は祈りと善業によって修道者達をささえた。
祝日は8月8日
創立者聖ドミニコを親しく知っていた人々のなかでただセシリア修道女だけが聖人の身体的特徴と容貌について語っている。すなわち「セシリア修道女の奇跡」の終りの箇所に聖ドミニコの外貌に関する貴重な描写が残されている。ところで現代の新諸資料は、このセシリア修道女の記録の信憑性の検証に貢献している。すなわち第二次世界大戦後教皇ピオ十二世はポローニアのドミニコ会員に創立者の遺骸を調査する権限を与えられた。ドミニコ会員は戦時中創立者の墓を解体して、遺骸を収めた木棺と一緒に地下室に深くしまいその上を砂袋でおおっていたが、戦争終了後口ンパルディの管区長は教皇の許可のもとに遺骸にX光線による調査を行った。しかし遺骸の棺は開封する許可がなかった。様々の角度から多くの写真がとられ、それによって七百年後の今も聖ドミニコの遺骸のほとんどすべてが残っていることが判明した。多数の医者や人類学者が遺骸の調査に当った結果、聖ドミニコの骨格や身体特徴に関する精密な記録が作成されるに至った。教皇はこの調査結果に深く満足され、聖ドミニコの頭部を納めた別の聖遺物器を開封する許可を与えられ調査がより精密に行われるようにはからわれた。歴史家たちは長い間セリシア修道女の思い出を重視するようなことは全くなかった。その理由としては、思い出の口述当時彼女が余りにも老齢であったのと、誇張やこじつけをなし、勝手な想像を働かせて語ったに相違ないと臆測したからである。しかし調査の結果その疑惑は、彼女が聖ドミニコの容貌について語っている点に関する限りは、根拠のないものであることがわかった。彼女の叙述はその信憑性を科学的調査によって検証されるに至ったのである。すなわち彼女の報告では聖ドミニコは中背の人であったが科学的測定の結果五フィート六インチの背たけであることが立証された。また彼女は「彼の姿はしなやかで、幾分赤味がかった均整のとれた顔立ちをし、髪の毛とあごひげはやや赤味を帯びたブロンド色をしていました。白髪があちこち少しまじっていましたけれども禿げた所は少しもありませんでした」と言っているが、調査団が聖遺物器の底で発見した聖ドミニコの頭髪の幾つかの切れ端しは、まさしくセシリア修道女の語った色あいのものであった。さらに彼女は、「彼の額と眼からはすべての人々に畏敬を起こさせるまばゆい光りが射し、その眼は大きく美しくありました。」と続けて描写しているが、たしかに聖ドミニコの頭蓋骨には広く場所を占めた大きな眼窩が見られ、彼女のなした容貌の描写の正しさを裏付けている。科学的調査とセシリアの描写に基づいて一人の芸術家が聖ドミニコの姿を復元したが、それは少なくとも背たけや体形や均整に関しては生前のそれに合致している。セシリアはさらに次のように語っている。「彼の手は長く美しく、声は力強くよく響き、隣人の苦しみに対する同情に心痛している場合の外は、いつも快活でほほえみを絶やすことはありませんでした。」古い聖人のなかでこれほどその外貌が詳しく描写された聖人は、他にほとんど見いだすことができないであろう。
(ドミニコ会士、竹島幸一訳)
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